- 糖尿病について<まとめ>
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- 血糖値が高くなりすぎる病気
- 診断基準:早朝空腹時血糖値≧126mg/dL(あるいは随時血糖値≧200mg/dL)かつHbA1c≧6.5% 多彩な症状に注意:健診結果異常の他、口喝や体重減少などに注意。 合併症に注意:3大合併症(網膜症・腎症・神経障害) やがんの合併など
- 当院の治療アプローチ
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- ガイドライン: 糖尿病治療ガイド2022-2023(日本糖尿病学会)、高齢者糖尿病診療ガイドライン(日本老年医学会/日本糖尿病学会)に基づく治療。
- 食事・運動療法: 適正カロリー、有酸素運動。
- 内服・注射剤: 患者さんにあった薬剤選択や専門医紹介について。
糖尿病とは
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が多くなりすぎる病気です。初期には症状がほとんどありませんが、進行すると動脈硬化が進み、脳卒中や虚血性心疾患になりやすくなります。また3大合併症として、網膜症、腎症、神経障害があり、失明や透析につながる病気でもあります。(糖尿病、e-ヘルスネット、厚生労働省)
糖尿病には大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病の病型があります。他に膵臓癌など膵疾患によるもの、ステロイドなどの薬剤原因のもの、妊娠中のホルモン変化による妊娠糖尿病などもありますが割合としてはごく少数です。
全糖尿病患者の95%以上を占めるとされる2型糖尿病は過食・肥満などが原因のいわゆる生活習慣病とされており、膵臓のβ細胞から分泌されるインスリン(血糖を下げるというホルモン)は分泌低下・作用減弱があるものの分泌はされている状態です。一方、1型糖尿病は膵臓のβ細胞が主に自己免疫反応などによって破壊されてインスリンがほぼ分泌されない状態で、10~20歳台の突然発症がよく知られていますが高齢者の発症もあり、インスリン注射が必要な病態です。
このような症状から発見されることがありますので気になる方はご相談を。
- 健康診断などで「血糖値やHbA1c (ヘモグロビンエーワンシー)が高い」と指摘された
- 喉がよく渇く、水をよく飲む・尿の回数が増えた、尿のにおいが気になる
- 体重が急激に増加、または減少した
- 最近、疲れやすくなった・満腹感が得られない(いくらでも食べられる)
- 手足がしびれる・足がむくむ・皮膚が乾燥して痒い、皮膚に出来物ができやすくなった
- やけどや怪我をしても、あまり痛みを感じない
- 切り傷やその他の皮膚の傷が治りにくい
- 視力が落ちてきた、目がかすむ・意識が混濁することがあるなど
合併症に注意
高血糖状態が長く続くことで大小様々な血管に障害が起きます。
3大合併症としてよく知られているものには注意が必要です。
- 網膜症:網膜剥離や眼底出血から失明のリスクもあります。
- 腎症:人工透析の導入理由の第一位の疾患です。
- 神経障害:手足の感覚低下やしびれ感などがあります。
上記以外にがんなどの悪性腫瘍の合併や脳血管障害・心血管疾患などを合併しやすくなることも知られており、積極的に病気の早期発見に取り組む必要があります。
最近では糖尿病について広く知られるようになり、治療も進んだため、昔からあった失明や下肢切断といった状態になる方は非常に少なくなっています。
糖尿病の診断基準
- 早朝空腹時血糖値が126mg/dL以上(もしくは75gOGTTの2時間値が200mg/dL以上、あるいは随時血糖値が200mg/dL以上)
- HbA1c値が6.5%以上
上記の1と2の両方を満たす(1かつ2)と糖尿病と診断されます。なお、1か2どちらかが当てはまる場合は「糖尿病型」と診断され、再検査をして経過をみていくことになります。
HbA1c:過去1~2ヵ月における血糖の平均的な状態を示す血液検査です。合併症進行を防ぐためには、7.0%未満がコントロールの目安とされています。
当院での治療のポイント
治療にあたっては「糖尿病治療ガイド2022-2023」(日本糖尿病学会)、「高齢者糖尿病診療ガイドライン2023」(日本老年医学会/日本糖尿病学会)を参照して適正な血糖値になることを目指しております。
65歳未満→ 糖尿病治療の目標 (帝人ファーマ)
- 血糖正常化を目指す際の目標 HbA1c 6.0未満
- 合併症予防のための目標 HbA1c 7.0未満
- 治療強化が困難な際の目標 HbA1c 8.0未満
65歳以上→ 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について(日本糖尿病学会)
- 認知機能とADLの自立程度などを考慮してカテゴリーI~IIIまで分類。
- 低血糖のリスクのある薬剤投与の有無などからも目標設定をします。
糖尿病治療の目標は、血糖などを良好に管理することで、病気の進行や合併症・併存症を予防し、糖尿病のない人と変わらない生活を送れるようにすることです。
食事療法と運動療法
食事療法は適正エネルギーの摂取に努めます。過食(オーバーカロリー)はインスリンを多く分泌するよう膵臓に負担をかけていることになります。適正エネルギー(カロリー)の計算は、標準体重(身長(m)×身長(m)×22)×身体活動量(kcal)
(デスクワーク中心で25~30、立ち仕事などあると30~35、重労働は35以上)で算出します。栄養バランスの良い食事摂取を心掛けましょう。
運動療法では、血糖や脂肪を効率よく燃焼させるためにゆったりと全身の筋肉を使う有酸素運動が望ましいとされています。決してハードでなく息がやや弾む程度で十分なので、できるだけ継続して行うようにしてください。
食事療法と運動療法について具体的な内容の相談は受診時にさせていただきます。
内服・注射剤など
食事・運動や不摂生な生活を改善することで血糖コントロールが改善できればよいのですが、お薬が必要なことは多いです。
1型糖尿病ではインスリン療法が必須ですが、大多数の2型糖尿病の方は内服治療から考えます。インスリン抵抗性の改善を図るメトホルミンをはじめ、広く使用されている各種DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬を使用することが多いです。また最近注目されているGLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬と似た作用ですが、体重減少効果が強めなので注射/内服を適宜使用していくことも考えます。以前には非常によく使われていたスルホニル尿素(SU)剤は低血糖リスクも高めとされているので使用されていた方でも高齢者では減量や置き換えの方針としています。他にも非常に多くの薬剤があるのですが、内服薬でのコントロールが難しい場合などインスリン治療が望ましいのではと考えた場合は、当院での導入もありますが、生活習慣改善なども含めて一度専門医へ紹介受診して教育入院なども検討していただきます。入院というと嫌がられることが多いのですが、短期間で得られることも多く将来にわたって有益なことが多いので、初期段階でも是非お勧めしたいところです。いずれにせよ、外来でよく相談してということになります。